もう無い

ふ、と、自分が今失うものは何も無い、と思い、そのことに絶望した。
何かを失いたくなくて、必死で手を伸ばす必要が無いということに。
私は何かを求めていたいのだろうか。
そもそも、何も失わないと思っているこの状況は傲慢か。

私から離れていくものが何も無いだなんて、傲慢でなしにどうして思えるのか。
いや違うか…離れてほしくないものは、離れずにずっといると信じているのか。
なんでそんな気持ちでいられるんだ?
なんでそんな気持ちでいることを嘆くんだ?

繋いだ手が、サラサラと崩れていくような感覚。
自分の中身を、ザクザクと彫り出されて空っぽになっていくような感覚。
あの虚しさ、どうしたら言葉になるだろう。
何も去っていかないのに、虚しく寂しい、そんな言葉にしか出来ないことにも、悲しくなる。